賃貸マンションやアパートで、トイレのドアが開かないというトラブルに見舞われた時、持ち家の場合とは異なる、特別な注意が必要です。それは、「建物は、大家さんからの大切な借り物である」という大原則です。焦る気持ちから、自己判断でドアを破壊するなどの行為に及んでしまうと、賃貸借契約における「原状回復義務」に違反し、後々、高額な修理費用を請求されるという、二重の災難に見舞われることになります。賃貸物件で、絶対にやってはいけないこと。それは、「許可なく、建物を故意に損傷させる行為」です。例えば、マイナスドライバーでドアとドア枠の間を無理やりこじ開けようとして、塗装を剥がしたり、木材をえぐってしまったりする。あるいは、万策尽きて、ドアパネルを蹴破ったり、ガラス部分を割ってしまったりする。これらは全て、重大な契約違反となります。退去時には、ドア一枚を丸ごと交換する費用として、数万円から十万円以上の請求が発生する可能性も十分にあります。では、賃貸物件でこのトラブルに直面した場合、どのような手順を踏むのが正解なのでしょうか。まず、非常解錠装置を使うなど、建物を傷つけない方法を試すのは問題ありません。しかし、それでも開かない場合、次に行うべきは、「管理会社または大家さんへの連絡」です。これが、最も重要で、かつ優先すべき行動です。特に、鍵の不具合が、長年の使用による経年劣化が原因である場合、その修繕義務は、原則として貸主である大家さん側にあります。連絡すれば、大家さんの費用負担で、専門業者を手配してくれるはずです。もし、中に人が閉じ込められているなどの緊急性が高い場合や、夜間・休日で管理会社と連絡が取れない場合は、先に鍵屋を呼ぶこともやむを得ませんが、その場合でも、後から必ず管理会社に事後報告をすることが、トラブルを避けるためのマナーです。賃貸暮らしでは、常に「自分の家であって、自分の所有物ではない」という意識を持つこと。それが、大家さんとの良好な関係を保ち、余計な出費や揉め事を避けるための、賢い住まい方なのです。
賃貸物件でトイレのドアが開かない!やってはいけないこと