整備工場の現場でよく相談を受ける事例の一つに、ドアハンドルを引いてもスカスカとした感覚で空回りし、外側からも内側からも開かないというものがあります。この症状は、ハンドルとドアロック本体を繋いでいるプラスチック製のジョイントパーツが破損した際によく見られます。特に夏場の高温下でプラスチックが劣化しやすくなっている時期や、冬場に凍結したハンドルを無理に引いた際などに、ポキリと折れてしまうのです。ハンドルそのものは動いているように見えても、内部で力が伝達されていないため、何度操作してもドアは閉ざされたままとなります。 修理の現場では、まず開かなくなったドアをいかにして開けるかが最初の難関となります。内側から開かない場合は、後部座席からアクセスして内張りを慎重に剥がし、直接ロック機構を手で操作して解錠を試みます。外側のハンドルの故障であれば、ドア内部の狭い隙間に手や工具を差し込み、複雑なリンク機構を正常な位置に戻す作業が必要になります。こうした故障を経験したお客様の多くは、それまで何気なく行っていた開閉動作が、実は多くの小さな部品の支えによって成立していたことに驚かれます。特に、安価な中古車や過走行車では、見えない部分の樹脂パーツの寿命が近づいていることが多く、ある日突然の拒絶に繋がります。 予防策としては、ドアを閉める際に必要以上の力を使わないこと、そしてハンドルの動きに重さを感じたら、速やかに専用の潤滑剤を使用したりプロに相談したりすることが挙げられます。ドアが開かないという不便さは、単に車に乗れないというだけでなく、防犯上の不安や外出のスケジュール遅延といった多大なストレスを生みます。内側と外側の両方からチェックを行い、スムーズな動作を維持することは、車両全体の健康状態を保つことと同義です。修理現場に持ち込まれる多くのケースは、日頃のちょっとした違和感を見逃さなければ防げたものばかりです。愛車の発する小さな異音や手応えの変化に敏感になることが、長く安全に乗り続けるための秘訣と言えるでしょう。
車のドアハンドルが空回りして開かない故障の修理現場から