現在主流となっている、カードやタグ型のICチップを使ったオートロックキー。その利便性は非常に高いものですが、技術の進化は、すでにその先の未来を見据えています。それは、鍵という「モノ」を携帯する必要が一切なくなる、究極のキーレス社会の実現です。その未来を牽引する主役となるのが、「生体認証(バイオメトリクス)」技術です。生体認証とは、指紋、顔、虹彩、静脈といった、一人ひとり固有の身体的特徴を使って、本人確認を行う技術のことです。この技術をオートロックシステムに応用することで、私たちの体そのものが、最も安全で、決して失くすことのない「鍵」となります。すでに、最新のタワーマンションなどでは、「顔認証オートロック」の導入が始まっています。エントランスに設置されたカメラが、近づいてきた居住者の顔を瞬時に認識し、登録されたデータと照合。本人であると確認されれば、自動的にドアが開きます。両手に大きな荷物を抱えている時も、子供を抱っこしている時も、ただエントランスに向かって歩いていくだけで、まるでコンシェルジュが出迎えてくれるかのように、スムーズに中に入ることができるのです。このシステムのメリットは、計り知れません。鍵を失くす心配はゼロになり、紛失に伴う再発行の手間や費用、セキュリティリスクから完全に解放されます。部外者が、拾った鍵や盗んだ鍵で侵入することも、原理的に不可能です。また、居住者の顔をデータとして登録するため、誰がいつ通過したかの正確な記録が残り、セキュリティレベルは飛躍的に向上します。もちろん、プライバシーへの配慮や、化粧やマスク、経年による顔の変化にどこまで対応できるかといった、技術的な課題もまだ残されています。しかし、スマートフォンのロック解除で、すでに私たちの生活に深く浸透している顔認証技術が、マンションのセキュリティのスタンダードとなる日は、そう遠くないでしょう。鍵という「モノ」の束縛から解放され、自分自身の存在そのものが、我が家へのパスポートとなる。そんな、より自由で、より安全な未来の暮らしが、すぐそこまで来ています。
オートロックの未来、顔認証が鍵になる日