オートロックが完備されたマンションは、一見すると非常に安全で、空き巣など無縁のように思えます。しかし、残念ながら、その「安全神話」を過信してはいけません。侵入のプロである空き巣は、オートロックのシステムの隙を突き、いとも簡単に最初の関門を突破してしまう、巧妙な手口を持っているのです。その手口を知り、適切な対策を講じることが、本当の意味での安全な暮らしに繋がります。最も古典的で、そして最も多い侵入の手口が「共連れ(ともづれ)」です。これは、他の住人がオートロックキーでエントランスを開けた瞬間に、その後ろから、あたかも同じマンションの住人であるかのように、さりげなく一緒に入り込む手口です。宅配業者や引越し業者を装うこともあります。人の善意や、「まさか不審者ではないだろう」という思い込みを利用した、非常に効果的な方法です。これに対する対策は、住民一人ひとりの意識にかかっています。自分がエントランスを開けた際は、不審な人物が後ろについてきていないか、一瞬でも良いので振り返る癖をつけること。もし、後ろの人が鍵を持っていなさそうであれば、「失礼ですが、どちら様ですか?」と、勇気を持って声をかけることも重要です。次に多いのが、「集合ポストからのチラシなどを利用した手口」です。犯人は、エントランスの集合ポストに投函されたチラシなどを抜き取り、ドアのセンサーが反応するタイミングで、ドアの隙間にそのチラシを挟み込みます。これにより、ドアが完全に閉まらなくなり、後から堂々と侵入するのです。また、オートロックの暗証番号を知られてしまうケースもあります。設置業者や管理会社の関係者から情報が漏れたり、住人が入力する様子を盗み見られたりするのです。オートロックは、決して万能の盾ではありません。それは、あくまで侵入に対する「第一の障壁」に過ぎないのです。本当の安全は、オートロックを過信せず、各住戸の玄関の鍵を、ピッキングに強いディンプルキーにするなど、二重、三重の防犯対策を講じること。そして、住民一人ひとりが「自分たちの安全は、自分たちで守る」という、高い防犯意識を共有することによって、初めて実現されるのです。
オートロックなのに空き巣?その侵入の手口と対策